千葉県鋸南町の菱川師宣記念館で、企画展「安房の名工~その系譜と安房の彫物の魅力~」が開かれています。会期は2026年9月29日(火)から12月6日(日)まで。休館日は月曜(祝日の場合は開館し翌平日が休館)です。江戸から明治にかけて安房(房総南部)で活躍した3人の彫刻の名工、後藤義光・武志伊八郎信由(波の伊八)・武田石翁の作品を紹介する展覧会です。
この記事は2026年10月1日時点で、鋸南町公式サイトと菱川師宣記念館の展覧会リーフレット(PDF)を直接確認してまとめています。

会場の菱川師宣記念館は、「見返り美人図」の作者の生誕地に建つ
会場の菱川師宣記念館は、浮世絵「見返り美人図」で知られる絵師・菱川師宣の生誕地である鋸南町吉浜に建つ浮世絵専門の美術館です。師宣は江戸で名をはせたあとも故郷の房州を誇りとし、生涯にわたって地元とのつながりを持ち続けた人物とされています。記念館は、師宣の業績や作品を紹介する常設展示に加えて、年に数回、テーマを変えた企画展(特別展)を開催しています。過去には「芳年武者ぶるい」(2026年7月)、「広重が描いた房総の風景」(2026年4月)といった企画展が開かれており、「安房の名工」はその最新の回にあたります(鋸南町公式サイトの新着情報より)。
新発見の伊八彫刻と、毀損した石仏の3Dレプリカ復元が目玉
展覧会は、後藤義光とその師や弟子たちの系譜を作品とともにたどる展示が中心です。あわせて2つの注目展示があります。1つは、新たな発見となった武志伊八郎信由(波の伊八)の脇障子彫刻「牡丹に獅子」(阿吽の対)。もう1つは、千葉大学デザイン文化計画研究室の協力による、日本寺に伝わる武田石翁作「十二神将像」の3Dレプリカです。石翁の十二神将像は現在、毀損が激しく進んでいるため、3Dレプリカでの復元展示という形で紹介されます。
「安房の三名工」とは。彫物大工・宮彫師・石工の3人
展覧会が紹介する3人は、安房で活躍した名工として「安房の三名工」と呼ばれています。
- 後藤利兵衛橘義光(後藤義光) 彫物大工として一門を育て、その技術の高さを競い合った人物。幼名は若松、通称は利兵衛。23歳で江戸に出て彫刻師・後藤恒俊に弟子入りし、安政3年(1856年)、42歳で安房に帰郷しました。代表作は鶴谷八幡宮(館山市)の格天井「百態の龍」など、生涯で手がけた作品は把握されているだけで100を超えるとされます(日本語版Wikipedia「後藤義光」の項目より)。
- 武志伊八郎信由(波の伊八) 躍動する波の表現で「波の伊八」の名をとどろかせた宮彫師。房総各地の約50の寺社に作品を残したとされ、代表作は、いすみ市の行元寺にある欄間彫刻「波に宝珠」です。
- 武田石翁 石工から孤高の芸術を追求し続けた石彫の名工。
(出典:鋸南町公式サイト「安房の名工」展リーフレットの解説文、および日本語版Wikipedia「後藤義光」、2026年10月1日確認)
波の伊八は、北斎「神奈川沖浪裏」のルーツ説で知られる
波の伊八(武志伊八郎信由)は、1751年に生まれ1824年12月19日に没したとされる彫刻師です。彼の集大成とされるのが、50代ごろの1807~1808年(文化4~5年)に手がけた行元寺(いすみ市)の欄間彫刻「波に宝珠」。その約20年後、1830~1834年(天保元年~3年)ごろに葛飾北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」が作られています。波の伊八の波の表現が、北斎の代表作の構図に影響を与えた可能性があると、ニッポンドットコムの記事(2024年配信)は紹介しています(「房総の彫工「波の伊八」とは何者か」ニッポンドットコム、2026年10月1日確認)。今回の鋸南町の展覧会で紹介される伊八の脇障子彫刻「牡丹に獅子」は、行元寺の代表作とは別の、新たに発見された作品です。
鋸南町内にも後藤義光の作品がある。妙本寺の龍の彫刻
後藤義光の作品は、鋸南町内でも実際に見ることができます。吉浜にある妙本寺には、義光50歳のときの彫刻とされる客殿向拝の龍と、蟇股(かえるまた)の龍が残っています。施主は大六村(現・鋸南町大六)の池田嘉兵衛らだったと伝わります。本堂向拝の彫刻には、義光の門人で甥にあたる後藤義信の作品も残されています(たてやまフィールドミュージアム「初代後藤義光の彫刻を訪ねて3.(鴨川・鋸南・富山編)」、2026年10月1日確認)。妙本寺そのものの参拝・アクセス情報は、当サイトの施設ガイドにまとめています。→ 鋸南町・妙本寺の施設ガイド
十二神将像の本物は鋸山・日本寺にある。あわせて回れる
展覧会で3Dレプリカとして復元展示される武田石翁作「十二神将像」の本物は、鋸南町の鋸山にある日本寺に伝わる石像です。日本寺は、高さ30メートルの磨崖仏「百尺観音」や、1,553体の石造「千五百羅漢像」で知られる古刹で、山頂エリアへは鋸山ロープウェーでアクセスできます。拝観料はロープウェーの運賃とは別料金です(「鋸山 日本寺」ぼうそうタウン、2026年10月1日確認)。日本寺の拝観料・ロープウェーの料金やアクセスは、当サイトの施設ガイドにまとめています。→ 鋸山ロープウェーの施設ガイド|往復1,200円・駐車場は有料200台、日本寺の拝観料は別。展覧会で3Dレプリカの作り方や複製の経緯まで説明されているかどうかは、2026年10月1日時点で公式サイトに記載がなく確認できていません。
来館前に知っておきたい割引とクチコミ(Googleマップより)
Googleマップのクチコミ(2026年10月1日時点で3.8点・145件)には、割引に関する具体的な情報を書き込んだ投稿があります。ローカルガイドの投稿(6か月前)には「500円は少し高い気もするが、JAF割で100円引、隣の観光案内所で100円引券をもらえるので、どちらかを利用して下さい」とあります。別の投稿にも「入場券はJAF、AEONカード提示で団体料金になる特典あり」との記載があります(Googleマップ「菱川師宣記念館」クチコミより)。あわせて、展覧会の公式リーフレットを持参すると、入館料が2割引(1グループまで)になる特典もあります。入館料をやや高く感じる投稿がある一方、こうした割引を使えば実質的な負担は下がります。

施設情報・アクセス
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | 菱川師宣記念館 |
| 所在地 | 〒299-1908 千葉県安房郡鋸南町吉浜516(道の駅きょなん内) |
| 会期 | 2026年9月29日(火)〜12月6日(日) |
| 開館時間 | 9時から17時まで(入館は16時30分まで) |
| 休館日 | 月曜日(祝日の場合は開館し、翌平日が休館) |
| 入館料 | 一般・大学生500円(団体20名以上400円)、小中高校生400円(同300円) |
| 駐車場 | 道の駅きょなんの共用駐車場(普通車71台・大型車5台、うち障がい者用1台)。駐車料金の記載は公式サイトになし |
| 電車 | JR内房線 保田駅下車、徒歩20分(記念館) |
| 車 | 富津館山道路 鋸南保田ICから約5分、国道127号沿い |
| 電話 | 0470-55-4061(菱川師宣記念館) |
施設全体の概要や常設展示、周辺の道の駅きょなんの情報は、当サイトの施設ガイドで詳しく紹介しています。→ 鋸南 菱川師宣記念館の施設ガイド|入館料金・駐車場・アクセスは?
会期中に鋸南町の「頼朝まつり」も開かれる
展覧会の会期(9月29日〜12月6日)のうち、10月8日から22日までは、鋸南町の源頼朝ゆかりの史跡をめぐる「頼朝まつり」の開催期間と重なります。頼朝まつりの会場は竜島地区が中心で、菱川師宣記念館とは鋸南町内でも離れた場所になりますが、同じ時期に鋸南町を訪れるなら、あわせて予定に入れられます。頼朝まつりの内容や申込状況は、当サイトの記事で詳しく紹介しています。→ 鋸南町の頼朝まつりは10/8-22|甲冑着付と頼朝展は申込不要、10/18は講演会も
道の駅きょなんの他の施設もあわせて
菱川師宣記念館があるのは、東京湾に面した道の駅きょなんの敷地内です。隣接する鋸南町観光案内所や、物産センター内のベーカリー・物産館・クラフトビール醸造所なども同じ敷地にあり、展覧会の前後に立ち寄れます。南房総エリアの道の駅を比較した記事もあわせてご覧ください。→ 南房総・鋸南の道の駅5選|駐車場は保田小学校197台・鄙の里70台と2.8倍差
まとめ
菱川師宣記念館の「安房の名工」展は、12月6日まで約2カ月にわたって開かれる長期の企画展です。入館料は通常の鑑賞料金と同じ500円・400円で、JAF割や観光案内所の割引券、リーフレット持参の2割引を使えば負担を抑えられます。会期が長いため、頼朝まつりや鋸山・日本寺の観光とあわせて、都合のよい日に訪れやすい展覧会といえます。
この記事で確認できていないこと(2026年10月1日時点)
- 展覧会期間中の混雑状況・来場者数の見込み
- 駐車場が満車になる具体的な時間帯
- 「安房の三名工」の名工ごとの詳しい出品点数の内訳
- 武田石翁の生没年・経歴の詳細(公式サイト・リーフレットに記載なし)












