鋸南町下佐久間にある「天寧寺(てんねいじ)」は、臨済宗建長寺派の禅寺です。房総半島南部の山あいに位置し、地元の人でなければあまり通りかからないような立地ですが、その分静かに参拝できる場所でもあります。境内には樹齢700年を超えるとされる「柏槙(びゃくしん)」の巨木があり、千葉県の天然記念物に指定されています。室町幕府を開いた足利尊氏ゆかりの寺としても知られています。
この記事では、駐車場・アクセスと、柏槙の大きさ、足利尊氏が禅寺に改めたという歴史についてまとめました。所在地は千葉県安房郡鋸南町下佐久間3180です。
天寧寺の歴史年表
開創から現在までの主な出来事を年表にまとめました。建長年間の開創からおよそ800年、律宗から禅宗への改宗からも670年以上が経過しています。
| 年 | 出来事 | 2026年からの経過 |
|---|---|---|
| 建長年間(1220年代) | 開創(当初は律宗) | 約800年 |
| 文和元年(1352年) | 足利尊氏の意向で古先印元を招き、臨済宗の禅寺に改宗 | 674年 |
| 応安7年(1374年) | 柏槙が植えられたと伝わる | 652年 |
| 明暦元年(1655年) | 火災 | 371年 |
| 宝永4年(1707年) | 観音堂建立 | 319年 |
| 1939年(昭和14年)12月15日 | 柏槙が千葉県天然記念物に指定 | 87年 |
樹高15m・幹回り4.8mの柏槙
千葉県教育委員会によると、天寧寺の柏槙は1939年(昭和14年)12月15日に千葉県の天然記念物に指定されました。指定時の記録では樹高約15メートル、幹回り約4.8メートルとされています(千葉県教育委員会、2026年8月28日時点)。房総タウン.comなどでは推定樹齢750年と紹介されていますが、情報源によって700年前後・730年あまりなど幅があり、2026年8月28日時点で確定した年数は確認できていません。2025年で天然記念物指定から86年、2026年で87年になります。

足利尊氏が禅寺に改めた歴史
天寧寺の開創は建長年間(1220年代)で、もともとは律宗の寺院でした。文和元年(1352年)、室町幕府初代将軍・足利尊氏の意向により、禅僧・古先印元(普明国師)を招いて臨済宗の禅寺に改められました。本尊の釈迦如来坐像は、古先印元が中国の「天寧寺」という寺から持ち帰ったものと伝えられており、寺の名前もこの中国の寺にちなむとされています。もともと律宗だった寺院が、当時の最高権力者だった足利尊氏の関与で禅宗に改められたという経緯は、この地域の寺院の歴史の中でも珍しい部類に入ります。
その後、江戸時代前期の明暦元年(1655年)に火災に見舞われ、江戸時代中期の宝永4年(1707年)に観音堂が建てられました。柏槙が植えられたのは応安7年(1374年)と伝えられており、明暦の大火の痕跡を今も留めているとされています。江戸時代末期の三舟のひとり、山岡鉄舟が「房海古禅林」の書を残したことでも知られています。三舟とは山岡鉄舟・勝海舟・高橋泥舟の3人を指す呼び名で、いずれも幕末から明治にかけて活躍した人物です。応安7年(1374年)の柏槙植樹から2026年で652年、文和元年(1352年)の禅宗改宗から2026年で674年、宝永4年(1707年)の観音堂建立から2026年で319年が経過していることになります。
山岡鉄舟は剣術・書・禅にすぐれた幕臣として知られ、江戸城無血開城に向けた勝海舟と西郷隆盛の会談に先立ち、単身で駿府(現在の静岡市)まで赴いて西郷と直接交渉したことで知られています。明治維新後は宮内省で明治天皇の侍従を務め、書家としても多くの作品を残しました。房総半島にまで足を運んで天寧寺に「房海古禅林」の書を残した経緯の詳細は、2026年8月28日時点で確認できていませんが、鋸南町のような地方の禅寺にも幕末の著名人の足跡が残っている一例といえます。

安房国札三十四観音の第七番札所
天寧寺は「安房国札三十四観音」の第七番札所で、本尊は千手観世音です。安房国札三十四観音は、旧安房国(現在の館山市・鴨川市・南房総市・鋸南町)の寺院を巡る鎌倉時代開創の霊場群で、関東一円にまたがる坂東三十三観音とは別の、安房国内で完結する独自の巡礼です。この霊場群は丑年に本開帳、午年に中開帳が行われるとされており、これも石堂寺の本堂と同じ丑年・午年のサイクルにあたります。保田・勝山地区では、毎年7月10日と8月10日に千手観音を詣でる「十日参り」という風習が今も続いているとされています。
拝観料金・駐車場・アクセス
拝観料金・営業時間について2026年8月28日時点で公式な案内を確認できていません。一般的な地方の禅寺と同様、境内への立ち入り自体は無料とみられ、特定の定休日は設けられていないとみられますが、確定情報ではないため、訪問前に電話(0470-55-0639)で確認することをおすすめします。
駐車場はありますが、収容台数については確認できていません。手段ごとのアクセス目安は次のとおりです。
| 手段 | 起点 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 車 | 富津館山道路「鋸南保田」インターチェンジ | 確認できていません(国道127号から山側へ) |
| 電車 | JR内房線「安房勝山」駅 | 徒歩約15分 |
| 徒歩(寺院間移動) | 第六番札所・刻経寺 | 徒歩約30分(JR内房線を挟んで反対側の山あい) |
車の場合、正確な所要時間は2026年8月28日時点で確認できていません。国道127号から山側に入る道を進む形になるため、カーナビや地図アプリでの経路確認をおすすめします。
周辺の道が分かりにくい場合、天寧寺と同じ下佐久間地区にある鋸南町役場(下佐久間3458番地)が目印になります。役場の開庁時間は午前9時から午後4時30分まで、土曜・日曜・祝日・12月29日から翌年1月3日は休みです。電話は0470-55-2111です(鋸南町公式サイト、2026年8月28日時点)。
よくある質問
柏槙の樹齢は何年ですか?
情報源によって700年〜750年と幅があり、断定できる一次資料は確認できていません。参考として、確認できた数字を並べると次のとおりです。
| 数字 | 根拠 |
|---|---|
| 樹齢約700年〜730年余り | 複数の紹介記事・観光サイトでの表記(出典は明記されていないものが多い) |
| 推定樹齢750年 | 房総タウン.comなど |
| 植樹652年前(応安7年伝承から逆算) | 寺伝の「応安7年(1374年)植樹」を2026年から差し引いた年数 |
| 天然記念物指定から87年 | 千葉県教育委員会の指定日(1939年12月15日)から確定的に計算できる年数 |
確実に言えるのは「指定から87年」という事実だけで、樹齢そのものの確定値は千葉県の公式記録にも明記がありません。伝承の植樹年(1374年)を採用すると650年余りとなり、一般に紹介される700〜750年よりも短くなる点にも注意してください。
柏槙以外にも見どころはありますか?
宝永4年(1707年)建立の観音堂や、山岡鉄舟の書「房海古禅林」があります。安房国札三十四観音の第七番札所として、御朱印を求める参拝者が訪れることもあります。御朱印の授与時間や初穂料については2026年8月28日時点で確認できていないため、訪問前に電話で確認しておくと安心です。
荒天時でも参拝できますか?
山あいのお寺のため、大雨や強風の際は境内や参道が滑りやすくなることがあります。天候が悪い日の訪問は避けることをおすすめします。とくに柏槙の周辺は根が張り出している場所もあるため、足元に注意してください。
近くに他の観光スポットはありますか?
同じ鋸南町下佐久間地区には、桜の名所として知られる佐久間ダム公園があります。あわせて立ち寄るプランもおすすめです。
十日参りには誰でも参加できますか?
7月10日・8月10日の十日参りは、保田・勝山地区に伝わる地域の風習として続けられているとされています。具体的な受け入れ方法や時間帯については2026年8月28日時点で確認できていないため、参加を希望する場合は事前に寺へ電話で確認することをおすすめします。
まとめ
天寧寺は、樹齢700年を超えるとされる柏槙の巨木と、足利尊氏ゆかりの改宗の歴史を持つ禅寺です。柏槙は1939年12月15日に千葉県天然記念物に指定され、樹高約15メートル・幹回り約4.8メートルという記録が残っています。指定から2026年で87年が経過しています。
安房国札三十四観音の第七番札所でもあり、JR内房線「安房勝山」駅から徒歩約15分とアクセスも比較的良好です。鋸南町の歴史ある禅寺として、訪れる価値のあるスポットです。派手な観光地ではありませんが、幕末の書家・山岡鉄舟の書や、応安7年(1374年)伝来の柏槙など、じっくり歴史をたどりたい人には見応えのある場所です。
鋸南町内には佐久間ダム公園や妙本寺など見どころも点在しています。歴史ある寺社と自然を一緒に楽しめるエリアなので、あわせて巡るプランもおすすめです。
南房総版では、館山・勝浦を中心に南房総市・鴨川市・鋸南町のイベントや店舗情報を今後も取り上げていきます。あわせて鋸南町エリアの記事一覧もチェックしてみてください。




